学生の頃、東南アジアのZ国に3ヶ月ほど語学留学したことがある
ある日、仲良くなった現地の学生と遊びに出掛けた時のこと。
いわゆる「誰か一人がジュースを全員分奢る」ゲームをやろーぜという話になった。
(おお、そのゲームは我が国にもあるぞ)
リーダー格のWが私に「お前はやり方がわからないから、今回は免除だ」的なことを言うと、
残りの全員に「じゃあ、みんなでジョイ・キャン・プンするぞ!」と叫んだ。
(ジョイキャンプン? おお、なんだそのどこかで聞いたような響きは)
「日本にもそれと同じジャンケンポンというのがあるぞ」と言いだすまもなく、
Wの掛け声と同時に全員が出した両手(片手ではない)の形を見て目を剥いた。
ある者はまるで”鳳凰が舞う”ような、
またある者は、”吽形と阿形が気を吐く”かのような、
百花繚乱~百家争鳴~百花斉放、一人としてとして同じものがない。
ルールがあまりに複雑だからなのか、W自らは加わらず、
表のようなものと各人の手の形を見てしばし考えている。
やがてWが、勝ち抜けた者の名を呼び始めると、
次々と歓喜の声が上がり、最後まで呼ばれなかったIが悔しそうに崩れ落ちたのだった。
“審判”を終えたWが私に「おい、楽しいだろ。今度はお前も一緒やろうぜ」と誘ってきたが、
私は今さら「日本にはジャンケンってのがあるぜ」とは言い出せず、
ただただその複雑怪奇なゲームに閉口するだけだった。
意図したテンプレートファイルが表示されず行き詰まっていた時期、
私は毎回このゲームのことを思いだしていた。